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UbuntuでOrca



井上です。

 Ubuntu Linux
http://www.ubuntu.com/
が最近一部ではやってきていると思われます。
このUbuntuには最初からOrcaというGnome用のスクリーンリーダーが入っている
ということなので、しゃべらせようとしてみました。

 結果的に長文になってしまいました。

 参考にしたページは以下です。
Accessibility/doc/StartGuide - Ubuntu Wiki
https://wiki.ubuntu.com/Accessibility/doc/StartGuide
Orca - GNOME Live!
http://live.gnome.org/Orca
Using the Keyboard to Navigate the Desktop
http://library.gnome.org/users/gnome-access-guide/latest/keynav-0.html.en

1. Live CDをしゃべらせる
 Ubuntu 8.04 LTSを使いました。なお、一つ前の7.10はOrcaがちゃんと動いて
くれませんでした。
 Ubuntu 8.04 LTSのデスクトップ用CDをダウンロードしてCDに焼き、そこから
起動させます。
 CDを読み始めたと思ったら、数秒待って一度Enterを押します。いろいろ調べ
ると、8.04からここで言語選択リストが出るようになったそうで、上記のEnter
は英語を選ぶ意味になります。
 次にF5を押してアクセシビリティの設定画面を出します。そして、上に上げた
Ubuntu Accessibilityのページの情報に従って、3回下矢印キー、そしてEnterを
押します。
 最後に起動を開始するためにもう一度Enterを押します。
 するとCDを読み始め、ブートが始まります。何分かかかりますが、Ubuntu特有
の「アフリカ!」という感じの起動音がなり、続いてOrcaの設定画面を読み上げ
始めます。
 ここですでにGnome Desktopをしゃべる状態になっているので、いろいろ遊ぶ
ことができます。たとえばALT+F1でいわゆるスタートメニュー、ALT+F2でいわゆ
る「ファイル名を指定して実行」みたいな感じです。
キーボードショートカットはWindowsと若干違う部分があり、またパネルなどの
新しい概念があるので、一度は「Using the Keyboard to Navigate the Desktop」
を読んだ方がいいようです。
 声の質は思ったより聞きやすいです。昔のFreeTTSはもごもごしていたのです
が、音程の問題か、ずっと聞きやすいものになっています。

2. HDDにインストールする
 Ubuntu 8.04 LTSはCDに含まれるwubiというツールでWindowsパーティションの
中にディスクイメージを作ってマルチブートでインストールする機能を持ってい
ます。
このwubiもアクセシビリティ設定機能があり、最初からOrcaのしゃべる状態でイ
ンストールすることができます。
 注意すべきなのは、Orcaは日本語に対応していません。なので、言語選択では
英語を選ぶ必要があります。Orcaは現状日本語を読めないので、後から英語に戻
す操作は自力では厳しいでしょう。
 インストールの途中で再起動を求めてきます。NTローダのboot.iniにUbuntu用
のエントリができているので、HDDを読んだタイミングで下矢印を一度押して、
Ubuntuを選ぶ必要があります。ここからは何もしゃべりませんが、Linuxの世界
でパッケージのインストールが進みます。ひたすら待っていると再起動します。
 Ubuntuを起動する場合も上と同じようにNTローダのメニューでUbuntuを選びま
す。しばらく待つと、鼓というか太鼓みたいな音がします。これがログイン画面
が出た合図になっているようです。インストールの時に決めた自分のユーザ名を
タイプし、Tabを一度押して、パスワードを入れ、Enterを押します。すると例の
アフリカっぽい起動音がして、Orcaもしゃべり始めます。

3. アプリケーション
 以下のアプリを動かしてみましたが、それなりに使える漢字でした。
- FireFox: hで見出しにジャンプできるなど、一般的なスクリーンリーダーでで
きるようなことを一通り可能になっています。「次のLive Regionに移動」とい
うようにARIAも意識したものになっています。完全ではないですが、力を入れて
いるだけのことはあるようです。
- Terminal: 点字も含めて普通の端末ソフトとして使えました。コンソールで
brlttyを使うよりは切れが悪い面もありますが、実用的だと思いました。
- Nautilus(いわゆるファイルマネージャ): WindowsのExplorerとそれほど違い
なく使える感じでした。
- OpenOffice Writer: Formatのメニューから箇条書きを選んだりしてみました
が、ちゃんと行読みで箇条書きの存在や種類を読み上げてくれていました。

4. 困ったこと
4.1 システム管理タスク
 Orcaのページにも書かれているのですが、Orcaはログインしたユーザの権限で
動いているため、管理のための作業をするためにroot権限で起動したアプリを読
み上げできません。一応こちら
http://live.gnome.org/Orca/SysAdmin
に対策が書かれているのですが、やはり管理系アプリを起動すると無言になりま
す。Windows VistaのUser Access Controlもそうですが、支援技術とセキュリティ
にはいろいろ相反するところがつきまとうのですね。

4.2 点字表示
 brlttyを動かすとOrcaから点字を出すことができます。しかし、この設定を
Ubuntuでどうやるのが適切なのかがいまいちわかりません。一応、以下の手順で
ALVA Satelliteに点字表示できましたが、再起動すると忘れてくれるみたいです。
- 事前に/dev/ttyS0のパーミッションを777にする。
- Accessories->Terminalを開く。
- sudo /sbin/brltty-setupを実行する。必要なポートや点字ディスプレイの種類を聞かれる。
- 終わったらOrcaを再起動する。

 日頃使うのがウェブブラウザと端末ソフトやメーラーである場合、英語圏では
かなりいいところまで行っているような印象を持ちました。Gnome Speechに対応
した日本語エンジン、OrcaからSCIM(多言語入力プラットフォーム)の状態を検出
する仕組みなどが整備されれば、いろいろとおもしろいのではないかと感じまし
た。

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                    Koichi Inoue, ARGV
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