ARGV -> 井上のトップページ > Debian GNU/Linuxインストールメモ
(2005/2/8追記)2004年11月以降のAccessフロッピーでは、イインストール時に使っ た点字ディスプレイがインストール後も自動的に有効になるようになりました。 2004年8月のバージョンでは再起動後にBRLTTYが起動しないというバグがありま した。必ず最新版をチェックして使うようにしてください。
以前から BEP のデモや開発、日頃の生活で利用してきたThinkpad 240ZのHDDが先 日飛んでしまいました。Windows 2000と、一緒に入っていたRed Hat Linux 7.3 環境とともに。 Windowsの方は昔つくっていたパーティションイメージから一応動く状態に復活 させることができましたが、Linuxの方は完全に焼失しました。(一応メインのデ スクトップ環境は無事なので生活に支障はありませんでした。)
同じRed Hatをインストールするのもあまりおもしろくないので、以前から触っ てみたいと思っていた Debian GNU/Linux を入れてみることにしました。インストールにはtesting(Sarge)のaccessフロッ ピーを利用しました。accessフロッピーはDebianを視覚障害者が独力でインストー ルできることを目的としたインストールディスクで、ALVAやVARIO、Braille Liteなど主要な海外の点字ディスプレイやDECTalk/DoubleTalkといった音声合成 を利用してインストール作業を行うことができます。 一応動く状態になったので、その状況メモを書いておきたいと思います。と思っ たら結構長くなってしまいました。
ここでインストールしたマシンのスペックを書いておきたいと思います。
今までRed HatなどのインストールはもっぱらDOSやLinuxのkermitまたは TeraTermでインストール対象のマシンにシリアル接続し、インストーラのコンソー ルをシリアルに出すようにして行ってきました。 試しに「Debian インストール 点字ディスプレイ」とGoogleすると、 BRLTTY対応potatoインストールイメージ というのが引っ掛かります。試してみたのですが、そのときのフロッピーが 悪かったのか、インストーラーをブートするところまで行き着けませんでした。
次に試したのがWoodyの標準のインストールフロッピーでした。こちらは
boot: linux console=ttyS0
とやって起動すると一応カーネルの起動メッセージがシリアルに出て、フロッピー の交換まで行きます。しかし、なぜか私のマシンではフロッピーを入れ替えてエ ンター(本体、シリアル側とも)を押しても先へ進むことができず断念してしまい ました。
きっと新しいのではどうにかなっているに違いない、と調べているうちに、 Debianミラーサイト の testing(Sarge)用 インストール・フロッピー置き場にaccessというディレクトリを発見しました。 Speakup and BRLTTY enabled Debian-Installer flavour(メーリングリストの記事) に詳しく使い方が書かれています。(オフィシャルな記述をどこにも発見できていません。)
ちょうど私はALVA Satelliteを持っていて、これはBRLTTYでサポートされて いるので、これを使ってtestingバージョンのインストールしてみることにしま した。
無駄話が多くなってしまったので、ここからはいきさつを省略し、手順を追って インストール作業を説明することにします。
上に挙げたML記事は少し旧いので、必要なフロッピーイメージの名前が異なりま す。利用したフロッピーイメージは以下の三つです。これらを3枚のフロッピー にLinuxマシンでddを使って書き込みました。Linuxマシンがない場合は rawwriteなどのWindows/DOS用ユーティリティを入手して利用するのがいいでしょ う。
準備ができたら早速Debian Installerを起動します。Sargeからは新しいインス トールシステムが採用されていて、Debian Installerと呼ばれるようです。
フロッピーを入れて電源を入れ、フロッピーが少し動いたところで以下のように 打ち込みます。
linux brltty=al,,us
パラメータの意味は上に挙げたMLの記事を見てください。ここではbrlttyを利用 し、ALVAの点字ディスプレイ、出力COMポートはデフォルトで、変換テーブルは usを利用、という意味の入力をしています。当然ながら英語キー配列なので"=" の位置に注意しましょう。
フロッピーが止まって5秒くらい待ってからフロッピーをroot.imgのものに入れ 替え、エンターを押します。しばらくすると点字ディスプレイが動きだし、 Debian Installerの画面が表示されます。ディスプレイ側の移動キーで画面を確 認してみてください。
Debian Installerにはいろいろな機能があり、ユーザインターフェースも選ぶこ とができるとマニュアルに書かれています。このaccessフロッピーはtext形式の ユーザインターフェースを利用しているようです。基本的に選択肢に対応する番 号をプロンプトに対して入力していく方式です。少しまどろっこしいですが、音 声(speakup)でも使えることを考えると妥当なんだと思います。
BRLTTYはLinuxでもっともよく使われている点字出力ソフトウエアです。点字ディ スプレイ側のup/down/left/rightなどのキーはおそらく通常利用されているスク リーンリーダーと同じように働くはずです。
一つだけ、これはLinuxそのものの機能なのですが、画面の逆スクロール機能を 覚えておく方がいいです。特にこのインストーラは長いリストが画面の上の方に 流れて行って触れなくなる場合があるからです。Shift+PGUPを押すと画面が半画 面分上を表示します。Shift+PGDNで元に戻ります。何度も押すとそれだけずれた 部分を表示します。
ここからは画面の指示に従って進んで行きます。注意すべきところだけを示しま す。
最初の方に言語の設定があります。 BRLTTYは起動時に決めた言語しかサポートしていませんし、英語以外が得意な人 でない限り英語を選択しましょう。国はUnited Statesを選んでおいてかまいま せん。
ドライバをロードするかどうか聞かれたら、drivers.imgを書き込んだフロッピー を入れて「1. yes」を選択してください。
その後でインストーラーがCD-ROMをマウントしようとします。私は全部ネットワー クからダウンロードすることにしていたので、一度エラー表示が出てもメニュー が出るまで進み、そこで6.のネットワークの認識から続行できました。
ネットワークの認識では100近くのネットワークアダプタの一覧が数字つきで出 力されます。1画面に収まらないので画面スクロールを使って現在のマシンに入っ ているネットワークアダプタを選びます。この時LANポートはネットワークにつ ながっていて、DHCPサーバでアドレスが取得できる状態になっている必要があり ます。私は27.のeepro100を選択しました。
ネットワークが認識され、IPアドレスが振られるとホスト名、ドメイン名を聞か れます。適宜入力します。
残りのパッケージをダウンロードするためにDebianのミラーサイトを選びます。 選択式になっているので、Japanの適当なサイトを選びます。私は自分の所属プ ロバイダ内にあるring.asahi-net.or.jpを選びました。
ディストリビューションを1. stable, 2. testing, 3. unstableから選択するよ うになります。2.がマークされ、デフォルトになっています。ここで stable(Woody)やunstable(Sid)を選んでもそれらがインストールできるのかも知 れません。試していません。
続いていよいよインストール先のディスクパーティションを作成し、マウントの 仕方を決める段階に入ります。Debianを入れるマシンはあらかじめ確保されてい ない領域をつくっておき、そこに入れるようにするのが無難かも知れません。空 いた領域がない場合、HDD全体を削除してDebianで使うように自動設定するか、 手動でパーティションを編集するかのいずれかになります。空いた領域がある場 合はいくつかのよくある構成から選んで自動でパーティションサイズを決めてく れる機能もあります。
パーティションエディタもメニューから数字を入力して進んでいくタイプで、 ちょっとほかには見たことがありません。強いて言えばDOSのfdiskを強烈にした ようなものです。操作するパーティションまたはディスク装置をメニュー番号で 選び、そこでさらに表示されるメニューから必要なことを行って、最後にメニュー にある「Done」を選んでディスクメニューに戻る、というのを繰り返します。新 規パーティションを作成する場合は空き領域に当る番号を選択します。
それぞれのパーティションには、重要なところでは以下のような設定項目があります。
パーティションが表示されているメニューの最後にある「Finish」を選ぶと、ディ スクへの書き込みを確認されるので1. yesを選んで設定を確定します。間違って パーティションを消してしまっていても、ここでyesを選択するまでは無事です。 これを過ぎると元には戻れません。
ディスクへの書き込み確認を過ぎると、自動的にフォーマットが行われ、Debian の基本システムのファイルがコピーされます。じっと待ってください。
ファイルコピーが終了するとLinuxを起動するのに必要なブートローダおインス トールする画面となります。一般にはMaster Boot RecordにGRUBをインストール すればOKです。Windows以外ですでにGRUBが使われているOSが入っている場合や、 System Commanderなど市販の特殊な起動プログラムが入っている場合は"/"パー ティションの先頭にインストールするなど注意が必要なことがあります。初めて の場合はできるだけほかのOSと共存しない方がいいでしょう。
GRUBのインストールが終わると完了画面となります。 フロッピーをドライブから取出し、エンターを押すとシステムがHDDから再起動 を開始します。 起動すると、HDDにアクセスしてすぐにGRUBのメニューが立ち上がります。ここ では点字ディスプレイにはなにも表示されません。 そのままエンターを押します。 新しいDebian GNU/Linuxが起動します。
ちなみに、ここでデフォルトの一つ下はシングルユーザモードです。 下方向キーを何度か押してからエンターを押すと、元々入っていたOS(うちの場 合はWindows2000)の方を起動することができます。
再びディスクが止まったら基本セットアップが起動します。同時にBRLTTYによっ て点字が表示されていると思います。
再び点字で確認しながら設 定して行きます。ここからはインストールの時と違い、TABやカーソルキーで移 動、スペースやエンターで確定するフルスクリーンの設定画面たちが登場します。
基本セットアップで注意するポイントを以下に簡単に示します。
すべての基本セットアップが終了すると、ログインプロンプトが表示されます。 追加したユーザまたはrootでログインします。もちろん先ほど設定したパスワー ドが必要です。
後からDebianのパッケージ取得先としてunstableなどのより新しいバージョンが 含まれるソースを追加した時、知らないうちにシステムがunstableなバージョン に更新されてしまうことになります。これは、指定がないと取得できるもっとも 新しいバージョンのプログラムをインストールするという仕様からきています。 これについてはapt_preferences(5)のman pageが参考になります。この状況を防 ぐため、あらかじめ以下のようにしてAPTが取得するターゲットのディストリビュー ションを指定しておくのがいいのではないかと思います。
APT::Default-Release "testing";
インストールしたままのシステムではshutdownに-hオプションを指定しても電源 が切れません。これを可能にするにはapmdパッケージをインストールします。
apt-get install apmd
ノートPCなどでPCMCIAカードサービスを利用したい場合、pcmcia-cs(カードサー ビス用ユーティリティ)とkernel-pcmcia-modules-2.4.xx(カーネルのバージョン に依存)をインストールするとよいようです。カーネル2.6系を利用する場合は、 pcmcia-csパッケージだけインストールすればよいようです。(32ビットのカード のみ使うならばこれも必要ないようです。)
デフォルトでは開発環境もなにも入っていません。開発に必要な一連のツールを インストールするには、なにかのアプリをビルドするのに必要なツール一式を以 下のようにしてインストールするのがいいのではないかと思います。
apt-get build-dep emacs21
既存のWindowsとのマルチブートでインストールした際、まれにWindows領域がイ ンストーラーに認識されず、GRUBの起動メニューに出てこなくなる場合があるよ うです。パーティションを消したわけでもないのに起動メニューに出てこない場 合(メニューで下方向キーを2度押してエンターを押してもWindowsが起動しない 場合)には以下の作業が必要です。
Linux環境の/boot/grub/menu.lstを開きます。
そのファイルの最後に以下の内容を追加します。
title Windows NT/2000/XP root (hd0,0) savedefault makeactive chainloader +1
ここで、(hd0,0)とあるのは最初のHDDの最初のパーティションを表しています。 Windowsのブートローダーがあるパーティションを指定する必要があります。パー ティションの数えかたについてはGRUBのマニュアルを参照してください。
このページはDebianを初めてインストールして2週間の筆者が作成したものです。 嘘偽り、誤植、不適切なところなど多々あるかと思います。よろしければ下記ア ドレスにご意見いただけるとありがたいです。