[Prev]-[TOC]- [Next]  (Linux Conference 2000、2000年11月30日、京都国際会館)

Bilingual Emacspeakと
視覚障害者のLinuxアクセシビリティ向上


Bilingual Emacspeak Project (BEP) のメンバー
渡辺 <watanabe@argv.org>、井上<inoue>、坂本、切明、白藤、本多、西本、釜江、他


  1. はじめに;視覚障害者のコンピュータ利用
  2. Bilingual Emacspeak Project
  3. Linuxのユニバーサルデザイン

[Prev]-[TOC]- [Next]p.02


障害者とコンピュータ


IT時代;コンピュータとネットワークの急速な普及

デジタルデバイド
ITを利用できない人が取り残される;高齢者、障害者、貧困、...

日本は高齢化社会に突入
2015年には4人に1人は高齢者; あなたも高齢者=障害者!?

ITを支援技術として用いる
コンピュータに文字を読み上げさせれば視覚障害者も文字情報を利用可能


[Prev]-[TOC]- [Next]p.03

コンピュータによる文字の読み上げ


DOS:command.comに文字で指示、文字で結果出力
DOS用スクリーンリーダ

Windows:GUIは晴眼者には便利
Windows用スクリーンリーダ

UNIX系OS (PC-UNIXなど):高機能なネットワークOS
UNIX用スクリーンリーダ


[Prev]-[TOC]- [Next]p.04


Bilingual Emacspeak Project (BEP)
http://www.argv.org/bep/


  1. BEPの概要
  2. GNU Emacs
  3. Raman博士のUNIX音声化システムEmacspeak
  4. GUIとAUI (Auditory User Interface)
  5. 日本語を音声化するときに必要な機能
  6. Emacspeakの多言語化作業
  7. Linux用の日本語音声合成エンジン及びバイリンガルスピーチサーバの開発
  8. BEPの現状;内部ユーザが試用
  9. BEP一般公開への道筋
  10. BEPの将来



[Prev]-[TOC]- [Next]p.05

Bilingual Emacspeak Project (BEP)の概要


BEPの目的
日本の視覚障害者が仕事や研究や高等教育の場で使うシステム

BEP = Emacspeak(後述)+2カ国語 & Linux SS+Windows SS

BEPのメンバー
Emacsが好きな晴眼者と視覚障害者、ARGVのBEP MLで開発 (オープン)

BEPの効能
WindowsでもLinuxでも、モバイルノートでも、使い慣れたEmacsで作業できる


[Prev]-[TOC]- [Next]p.06


GNU Emacs;これさえあれば仕事も勉強もOK!




Raman; Emacsを音声化して自分用の音声化システムを開発





[Prev]-[TOC]- [Next]p.07

Raman博士のUNIX音声化システムEmacspeak


特徴

AUI (Auditory User Interface)

(欠点)


[Prev]-[TOC]- [Next]p.08


日本語音声化に必要な機能;説明読み


漢字は表意文字、複数の同音異義語がある;漢字、感じ、幹事、...
[各種読み上げのデモ]


かな漢字変換時
簡明な説明 と わかりやすい説明(検討中)
「亜」;アジアノ ア
カーソル移動時
「亜」;
文節単位の読み上げ
「前のユーザに」;マエノ カタカナ ユーザ ニ
文の読み下し
基本的に日本語音声合成エンジンに任せる


[Prev]-[TOC]- [Next]p.09


日本語音声化に必要な機能;音声フォント


耳で聞くと、ひらがなとカタカナ、大文字と小文字、全角と半角を区別不能


文字種別を説明
「カ」;カタカナノ カ、 「A」;オオモジ エー

音声フォント
声の種類やピッチを変える、全角と半角の場合は日米の声を使い分ける

audio queue
特有の短い音で合図する
「ひらがなとカタカナ」;ヒラガナト ピ! カタカナ




[Prev]-[TOC]- [Next]p.10


Emacspeakのローカライズ、多言語化


まずは日本語と英語を扱えるようにする。
ただし将来多言語に拡張するときのことも配慮する。








[Prev]-[TOC]- [Next]p.11


バイリンガルスピーチサーバへの要求


バイリンガルな音声合成エンジンは存在しない
・日米2つの音声合成エンジンを切り替えて音声化

言語によってエンジンの仕様が異なる
・差を吸収

Linux用の日本語音声合成エンジンがない
・クリエートシステム開発の開発キットから作成

Linuxには音声合成の統一インターフェースがない
(WindowsにはMS SAPIという統一インターフェースも日本語エンジンもある)
・自前で用意




[Prev]-[TOC]- [Next]p.12


Linux版スピーチサーバ

まだ日本語しか喋れない。英語はカタカナ英語。


仕組み [ss1のデモ]
「コマンド+読み上げ文字列」を標準入力で受け取り、コマンド解釈やスレッド操作などのスレッドと、文字列音声化のスレッドを走らせる。

英語音声合成エンジン
IBM ViaVoice Outloud [Outloudのデモ] 又は フリーなFestival

日本語音声合成エンジン
クリエートシステム開発(株)のLinux版音声合成SDK(PCMを吐くだけ)を使用

esoundのミキシングに対応
音声の即時停止;レスポンスが良くないと実用的でない


[Prev]-[TOC]- [Next]p.13


[Linux版のデモ]


  1. AUIによるカレンダーの音声化 (済)
  2. Audio Queue;空白行、大文字、インデント、... (済)
  3. 日本語の音声化、詳細読み (済)
  4. 基本編集操作
  5. 文字や単語単位の読み上げ、行の読み上げ
  6. 英語のカタカナ読み
  7. esoundによる音声出力とaudio queueの同時再生
  8. コンテキストに応じた声の使い分け voice-font-lock
  9. 具体例で以上の特徴をお見せします;




[Prev]-[TOC]- [Next]p.14


BEPの現状、試用


Windows版、Linux版とも開発中
BEP ML内部では公開。視覚障害者が一人で使用できるレベル。

Windows版 (バイリンガル)
WindowsでもEmacs、Mewを音声利用できるのが好評。長い英語も聞きやすい。

Linux版 (まだ日本語のみ)
Linuxノートを持ち歩いて、いつでもどこでもEmacsを音声利用可能。画期的!

BEPの現在の想定ユーザ像 (効率優先)
ARGVのメンバー、Emacsを音声利用したい人




[Prev]-[TOC]- [Next]p.15


BEPの予定

一般公開

点字出力
ソースコードの2次元配置を把握するために必要とするユーザもいる

多言語に拡張
韓国語、中国語、ヨーロッパなど

音声認識と併用

BEP 参加者募集中!
MLの参加方法は、http://www.argv.org/bep/ml 参照



[Prev]-[TOC]- [Next]p.16


Part III;Linuxのユニバーサルデザイン


アシスティブテクノロジー; BEP
支援技術

アクセシビリティ
障害者が使いやすいこと。
例;視覚障害者がアクセスしやすいWebとは、文字で情報を得ることができるWebページ。 階段を使わなくても出入りできる建物はアクセシブルな建物。

バリアフリー
障害を取り除くこと

ユニバーサルデザイン (UD)
できるだけ多くの人のためのデザイン。設計の初期段階から幅広い利用者を考えて、不注意や考慮不足で利用者を限定しないようにデザインする。

[Prev]-[TOC]- [Next]p.17


ユニバーサルデザインの7原則

「ユニバーサルデザインとは何か」 古瀬敏著、都市文化社選書


できる限り最大限すべての人が利用可能できるように、製品、建物、空間をデザインする。年齢、性別、障害などの理由で利用者を差別しない。


  1. 誰にでも公平に使用できること
  2. 使う上での自由度が高いこと
  3. 簡単で直感的に分かる使用方法となっていること
  4. 必要な情報がすぐ理解できること
  5. うっかりエラーや危険につながらないデザインであること
  6. 無理な姿勢や強い力なしで楽に使用できること
  7. 接近して使えるような寸法・空間となっていること



[Prev]-[TOC]- [Next]p.18


ソフトウェアのアクセシビリティ向上

情報とユーザインターフェースを分離すべし


WindowsはGUIと一体
スクリーンリーダはGUIを使わないと情報を取得できない
携帯機器の狭い画面でもGUIは使いにくい
初心者や幼児や高齢者はマウスが使えない。

UNIXはGUIと分離している
GUIツールを使わなくても、エディタで直接編集してシステムを管理できる。

GUIとAUI
AUIが音声化に適しているのは当たり前。でも晴眼者は使いにくいかも。
テキストベースならGUIでもAUIでも使いやすい。


[Prev]-[TOC]- [Next]p.19


Linuxのアクセシビリティ


Linuxの大衆化 = 使えればよい(Windows-like)ユーザの増加
GUIだけでしか操作できない状況にならないようにして欲しい!

GNOME
Sun Micrsosystemsは、GNOMEにGNOME Accessibility Interfaceを追加してアクセシブルなGTK Widgetsを作ろうとしている;http://www.sun.com/access/gnome/

Linuxのアクセシビリティ
日本でもLinuxのアクセシビリティ、ひいてはユニバーサルデザインを真剣に考えませんか? (自力インストールや自力初期設定への配慮など)
多様なユーザがLinuxに注目しています。バイリンガルで喋るLinux、キーボードだけで操作できるLinux、障害者だけでなく健常者にも使いやすくなりますよ。



[Prev]-[TOC]- [Next]p.20


視覚障害者と晴眼者の
ユニバーサル・ワークプレース


同じアプリケーションを使う

ユーザーに合わせてカスタマイズ
ユーザーの特性に適合;オーディオフィードバックのレベルなど

テキストベースで情報処理
理工系の仕事や研究で処理する情報のほとんどは文字で表現可能

仕事や研究で必要な機能をサポート
Emacsでほとんどカバーできる

[Prev]-[TOC]- [Next]p.21


晴眼者と視覚障害者の音声利用の比較

音声出力は、視覚も聴覚も使える晴眼者にも利益があることは間違いない。しかし晴眼者と視覚障害者の音声利用には大きく異なる点もある。

音声出力の特徴
視覚障害者にとっての音声利用;伝達速度の速さが重要
晴眼者にとっても音声利用;慣れていないので不安

[Prev]-[TOC]- [Next]p.22

まとめ


  1. コンピュータは障害者の支援技術として使える
  2. GUIしかないWindowsは音声化に適していない
  3. UNIXはWindowsに代わる高機能OSだが日本語音声化システムがない
  4. この状況を打開するためにBilingual Emacspeak Projectを立ち上げた
  5. LinuxをアクセシブルなOSにしよう。

このスライドや論文などの公開URL: http://www.argv.org/bep/doc/
BEP MLの参加方法: bep-subscribe@argv.org に空のメールを送る。




[Prev]-[TOC]- [Next]p.23


リンク集


BEP関連

Emacspeak関連 (英語)

スクリーンリーダ

その他 アクセシビリティ関連



Bilingual Emacspeakと
視覚障害者のLinuxアクセシビリティ向上
(Linux Conference 2000、2000年11月30日、京都国際会館)

スライド目次


Last Updated; November 28, 2000
By T. Watanabe