TS-590 + ボイス ガイドストレージユニット

私が初めてアマチュア無線局を開局したのはもう25年以上前のことである。当時は、電子工学に興味のある人でアマチュア無線技士の免許を持っている人は多かった。高校にはアマチュア無線部が存在することが普通だったし、中学生でも免許を持っている人はたくさんいた。

その後会話をするだけならば携帯電話やLine, Skypeのようなもので事足りるようになったので、わざわざアマチュア無線技士の免許を取得する人は数が減っていったのだけれども。

さて、2年ほど前に私は3回目の開局をした。社会人になって免許の更新をしていなかったり、更新を忘れていて免許がなくなったりしていたのだけれども、とりあえず今は免許がある。 その後引っ越しやらなにやらでアンテナを設置していなかったのだけれども、十日ほど前に久しぶりに通信ができる状態になった。 ということで、私が持っている通信機と、それをコンピュータに接続してできることを書き留めておこう。今更アマチュア無線なのだが、ダイアルをぐるぐる回していて、海外の無線局を見つけると、やはりわくわくするものだ。

Kenwood TS-590

現在、私が所有しているのは、ケンウッドのTS-590という機種である。1.9~50MHzの無線機。おまけでラジオが聴ける。通信機としての性能は他のレビューやメーカーサイトに譲るとして、ケンウッドのアマチュア無線機にかなり古くからオプションとして用意されている音声ガイドユニットについて書いておこう。

もう30年以上前のこと、トリオ(現ケンウッド)のアマチュア無線機にTS-711という機種があった。この機会の右下隅にVOICEと書かれたキーがある。これを押すと、ディスプレイ上に表示されている周波数をしゃべるのだ。オプションで用意されているボイスユニットなる小さな基板を装着する必用があるのだが、なかなか画期的なシステムだったと思う。

当時、合成音声でしゃべる機会はほとんど無かった。このユニットも数字しかしゃべれないので、20くらいのパターンを録音してそれを要求された順番にしゃべっている。それでも良い、なかなか便利だった。

このシステムは、車載用のアマチュア無線機にも導入されていた。運転中でディスプレイが確認できないような場合には使えたのかもしれない。だが、主にケンウッドの固定局用として設計された無線機に多く搭載された。なぜそのようなことになったのかをケンウッドの方に直接聞いたことはない。が、私にはそれで都合が良かった。

数回のバージョンアップを経て、現在はこの基板おそらく3代目になるだろう。私が持っているものは2008年に発売された基板だ。最近はしゃべるだけでなく、数十秒間の録音ができるようになっており、ちょっとしたメモ代わりや定型文をしゃべらせるのにも使える。きっとアマチュア無線家なら何に使うのかはすぐに分かると思うけれど。

ところがだ、先日発売された最高級の無線機TS-990のオプション品リストを見てもこの基盤がなくなっている。とうとうケンウッドはこの音声ガイド機能を止めてしまったのか、かなり心配した。慌ててマニュアルを確認、ようやく見つけた。

なんと、本体標準機能になっていたのだ。オプション装着の必用がなくなっていた。最近のアマチュア無線機はほとんどコンピュータである。CPUが搭載されDSPによる信号処理が当たり前に行われている。ならば、合成音声くらいそれらの機能で作れるのだろう。

現在アマチュア無線機を販売している日本のメーカーは大きなもので三つある。音声ガイドを試みたメーカーは他にもあったが、結局ケンウッドだけになってしまった。操作が複雑になりディスプレイを見なければ完全には使えなくなった今、選択肢はケンウッドだけになってしまった。

30年間もこの機能を作り続けているケンウッドには素直に感謝したいなと思う。この機能のユーザーは果たして何人いるのだろうか。

コンピュータと接続してできることって?

—続きはまた —