いよいよiOS 7登場

この記事は、iOS 7.0がリリースされる直前に書いたものである。現在2013年10月23日、リリースからほぼ一月経過している。この間にiOS7は3回アップデートされ、各種問題が修正された。

この記事で書いていることの中にもアップデートによって修正されたこともある。それを加味しつつお読みいただければ幸いである。

ことしもこの季節がやってきた。毎年9月前後に、Appleは新しいiPhoneを発売し、それに搭載するOSを正式リリースしてきた。

今年リリースされるのはiOS 7.0である。新しいOSの発表自体は6月のAppleイベントで行われ、その日に開発者にテストバージョンが公開された。このテストバージョンを使って、アプリ開発者は新しいバージョンのOSに対応するのである。また新しいOSが正式リリースされるまでの期間は、OS自身に含まれる問題をAppleに報告できる短い期間でもある。

私達は、6月からのおよそ3ヶ月の間、主に日本語環境におけるアクセシビリティについてテストを行い、多くのレポートをApple社に提出してきた。修正されたものもあるし、残念ながら修正されなかったものもあるし、修正中のものもある。

そこで、iOS 7の発表に合わせて、日本語でVoiceOverを使うユーザにとってのメリット・デメリットについてまとめておきたいと思う。念のため、私達はアップデートを推奨するものでもないし、アップデートをしないようにという意図もない。現状をあるがままに伝えることを目的にこの文章を書いている。

iOS 7になって、VoiceOverは進化しているのか

毎年アップデートが行われると、VoiceOverもいろいろな進化をしている。昨年は日本語の漢字を説明して読んでくれることだった。さて、今年の進化であるが、残念ながら昨年ほどのめざましい進化はない。日本語点字関連も大きく変わってはいない。テスト中に気がついた変更点を上げておく。

  • 写真アプリでの読み上げ改善が行われている。写真の向きや鮮明度を教えてくれるようになった。また、情報があればどこで撮影したのかを教えてくれる。
  • メールアプリで、メール一覧の状態でメールを左にスワイプするとメールの削除などが行えるが、これまでにもあったローターで選択できる「アクション」の項目が増えている。メールを開かなくても返信や転送ができるようになった。
  • 日本語テンキーのタッチ入力でも擬似的にフリック入力できるようになった。速度は出ないが使えるようになった。
  • これまでは端末の言語設定で設定した言語の音声だけが高音質で(ほとんどの場合日本語が高音質で)、他の言語の音声は圧縮音声であったが(例えば英語は圧縮音声になる)、複数の言語の音声を高音質にできるようになった。アクセシビリティ→VoiceOver→言語の設定で希望の音声をダウンロードできる。なお、言語ごとに速さを設定することもできる。ところが、この機能が正しく動作していない。日本語は高速に、英語は聞き取れる速度で読み上げさせられる機能だったので残念である。
  • 日本語入力時、削除キーを押したときの読み上げが改善されている。基本的に削除した文字を読むようになっている。
  • BlueToothキーボードで日本語を入力する際、スペースキーで変換を行ったときに読み上げない候補があったのが修正されている。
  • ローターで「文字」を選択し、1文字ずつ読んだときの読み方を、「文字だけ」・「文字と説明読み」・「説明読み」の中から選べるようになっている。
  • 3本指で4回タップすると、直前に読み上げた内容をペーストボードにコピーする機能が追加された。
  • 4本指で2回タップすると、VoiceOverのヘルプが起動するようになった。
  • Siriを使ってVoiceOverのOn Offができるようになった。これまでは事前にホームボタンを3回タップしてOn/Offするように設定する必要があったが、設定されていなくてもVoiceOverが起動できる。使いやすさを考えるとホームボタンでVoiceOverが起動できるようにしておく方が良いだろう。

日本語で使用したときにiOS6と比べて、悪くなってしまったところ

残念ながら、昨年発表されたioS 6にはなかった問題が、今年のiOS 7にはいくつかある。既にApple社にはレポートを行っている。

  • 文字読みで、主にカタカナが読めなくなってしまった。説明読みの「かたかな・あ」などは読まれるが、その前の文字部分が読まれない。また、一部の漢字の読みが適切でないか間違っている。「人」はその典型である。
  • iOS 7.03で修正済み。タッチ入力時、キーを長押しすると関連する文字が選べるようになるが(例えば大文字と小文字と全角など)、その状態になるまでの時間が極端に短い。文字の場合は文字の説明読みをしている時間があるのでなんとか入力できるが、記号や長音など、説明読みがないものは触れて1秒以内に文字選択状態になるため、間違って触ったときの対処がほとんどできない。タッチ入力ではかなり致命的な人がいるだろう。
  • 文章によって音声が聞き取れない問題が残っている。iOS 6では読めていたのが読めなくなったり、iOS 7で改善された部分があったりと、なんとも混沌とした状態である。
  • メッセージアプリの仕様が変更され、メッセージ内に書かれているリンクを選択するのが難しくなった。リンクが含まれているメッセージを読んでいるときに、ローターで「リンク」を選び上下フリックで選択するのだが、複数のリンクを含んだメッセージだとどれがどのリンクになるのかがわかりにくい。また、正しくリンクが開けないこともある。これもAppleにレポートをしている。

まとめ

iOS 7は、新しい機能をたくさん盛り込んでいる。デザインが大きく変更されているが、VoiceOverユーザから見ると操作はほとんど変わらない。新設されたコントロールセンターもきちんと使うことができるし、フォルダに入れられるアプリの数が12個だったのが、複数のページに分けることができるようになり、整理しやすくなった。
また、メールアプリもすべてのメールを読み込んでおくため、古いメールに移動するときなどの使い勝手は向上している。
音楽プレーヤーもかなり仕様変更された。これまでできなかったこととしては、あるアーティストの曲をアルバムをまたいで連続再生することができなかったが、今度のアップデートでできるようになった。地味だが便利だ。
その他にもAirDropなどの魅力的機能もある。Siriもなかなか楽しくなっている。

アクセシビリティ機能もちゃんと進化している。iOS 7 アクセシビリティ 改善点概略 ~正式版ダウンロード1週間前に~という記事を発見した。

なんと、手書きして文字を入力する機能が追加されている。スクリーンキーボードをVoiceOverを使って入力するのはそれなりに難しい。そこで、アルファベットを手書きして文字入力しようというのである。ところが、日本語環境ではこの機能は動作していない。対応するつもりがあるのかも把握していない。

現状を店頭で触って理解してからアップデートするかどうかを決めても良いと思う。一度アップデートしてしまうと一般的には元に戻すことはできない。また、新しくiPhoneやiPod Touchを購入しようと思っていらっしゃる方も、ゆっくり店頭で触ってみられることをお勧めしたい。

ところで、iPhone 5にiOS 7を導入したときの操作感であるが、極端に遅いと言うことはない。iPhone 4Sだと少し遅いかなと思うが、iPhone 5では普通に操作できる。実際iOS 7に併せて発表されたiPhone 5Cの処理能力はiPhone 5とほとんど同じである。

私達は、これからもApple製品のレビューを行い、必用なレポートはApple社に伝えていきたいと考えている。iOS 7のリリースは9月18日(日本では19日かな?)である。今後のApple製品のアクセシビリティ的進化に期待したい。Mac OSも新しくなる。そのうちこちらのレポートも掲載したい。